ニコラウス・クザーヌス(一四〇一〜一四六八)はドイツの最大の宗教思想家である。カトリックの枢機卿であった点でも有名であるが、そのかれは何よりも現在における東西宗教の融合の時代において最大の意義をもってクローズアップされつつあるのである。かれにおいてはもはやキリスト教と大乗仏教との対立の地平を超えられて、より高次の宗教の世界への展望がみられるのである。それは東西両宗教にとって最重要の課題でもある。
そのクザーヌスの思想的な意義を認め、またその原資料に誰よりも早く直接触れ、日本に紹介されたのが山本空外博士であった。それは東大『哲学雑誌』(第五十巻五七七号)における論文『浄化された日』として発表された。
そして、キリスト教も大乗仏教もクザーヌスにおいて根源的に通入しあうことになる。
なお今やクザーヌス研究は世界において、ドイツとともに日本はその最先端に立っている。そして日本においても現在、「日本クザーヌス学会」(本部 早稲田大学)が活動中であるが、その研究年誌『クザーヌス研究』の表紙の題字は空外博士ご自身の尊筆によるものである。そして、かかる点で空外博士ご自身の業績もまた二十一世紀の思想界においても測り知れない意義を存していることが考えられるのである。
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