旧夏(平成十三年)八月七日、山本空外上人は百歳のご高齢を持って遂にお浄土の入となられた。ところで「空外」とは、これに優る名はない。それは空がただ空にとどまるものではなく、外に向って限りなくはたらき出すところを意味しているからである。そしてそのはたらき出したところで空そのものの究尽がよりいっそう深く遂行されてゆくのである。
それは上人においては具体的に哲学において、はた墨筆において、そしてまた茶道等において、……そして何よりも空外上人の人間性そのものにおいてである。『心経』における「空即是色」の「色」rupaとはサンスクリットの言語からいって「顔」をも意味し、人間性そのものと不可分にかかわっている。そこには「空の現象学」がある。
先師山崎弁栄聖者は、旧来の浄土宗の教えの眼目たる「往生浄土」の信仰を「光の現象学」として展開せられたのであるが、空外上人はそれに即しながらさらに新しく「空の現象学」の世界を開かれたのである。「空外」とはまさにそのことを意味している。そこにも画期的な宗教改革の遂行がなされていたことが知られるのである。
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